先端技術で切り拓く動植物の生態(系)保全・共生への応用
自然や生態系の状態を把握する技術は進みつつある一方で、その情報を社会の意思決定や日々の管理、投資につなげる仕組みはまだ十分に整っていません。先端技術を活用しながら、生物多様性を継続的に把握し、企業、行政、研究者、市民など多様な主体が関わって地域の自然を支えていく仕組みのあり方を検討しました。
2045年のありたい未来ビジョン
「生物多様性が社会の中で持続的に管理されるシステムの構築」
2045年には、生物多様性が保護や規制の対象にとどまらず、地域管理組合を中核とする社会的システムの中で、継続的に把握・判断・管理される社会が実現しています。研究機関の知見に支えられながら、山・森・川といった自然環境と、そこに生きる動植物が一体的に扱われ、動植物園は、そうした管理の考え方や自然資本の価値を社会に伝える拠点として機能しています。
実現に向けたステップ
この未来を実現するために、まずは動植物園をはじめとする現場で、生態系や動植物の状態を把握・共有するための知の可視化を進めます。その上で、地域の多様な主体が自然管理に関与する実験的な枠組みを立ち上げ、最終的には役割・資金・判断が明確な管理主体へと発展させながら、生物多様性管理を社会の通常運用として成立させていく段階的なアプローチが整理されました。
フェーズ1:知の可視化と管理活動への関与拡大(2026〜2030年)
初期段階では、動植物園などの管理現場で、日誌のデジタル化やAIによる行動観察、自動給餌などを進め、省力化と安全性向上を図ります。生まれた余力を活かして飼育員や管理者が専門知識を社会に伝える活動へ時間を振り向けられる状態をつくるとともに、地域では、漁協・森林組合・自治体・研究者などが参加する地域自然管理組合の立ち上げを試行し、限定的な関与から管理の実験を始めます。
フェーズ2:管理主体の実体化と制度的正当化(2030〜2035年)
次の段階では、初期の活動で培った信頼関係と実績をもとに、地域自然管理組合を自然環境の管理主体として位置づけていきます。企業による寄付や協力がCSRやESG投資の文脈で正当化され、管理活動の資金としてこれらを組み込みながら、生態系サービスやアニマルウェルフェアに関する制度整備を進めると同時に、従来分断されていた森林・河川・野生動物などの管理分野を横断的に扱う枠組みを整えます。
フェーズ3:統合管理と社会システム化(2035〜2045年)
中長期的には、地域自然管理組合の役割を拡張し、森林・河川・野生動物を一体的に扱う管理主体として制度的に位置づけていきます。所有者不明地や私有地も含めた管理を進めながら、生物多様性管理を社会の通常運用として定着させます。技術は状態把握や判断の妥当性を支える基盤として活用し、動植物園はその考え方を社会へ伝える結節点となることを目指します。
メンバー
沖本 明快(白鷺電気工業株式会社)
浦野 知(株式会社ペコIPMパイロット)
古屋 瑠菜(株式会社grubio/東京科学大学)
下村 智範(株式会社ロジカ)
野上 大史(崇城大学 工学部 機械工学科)
安田 雅俊(国立研究開発法人森林研究・整備機構 森林総合研究所 九州支所)
伊藤 秀一(熊本市動植物園マスタープラン推進会議/東海大学 農学部)
北川 勇夫(熊本市動植物園)
大橋 匠(ファシリテーター/東京科学大学 環境・社会理工学院)