動植物園における学びを軸とした子育て支援社会の創出
子育て世帯の多忙化や地域コミュニティの希薄化が進む中で、子どもが自然や生命にふれる機会は少なくなっています。親子が実物の動植物にふれながら学び、地域の多様な大人とも関わりながら、単発の体験ではなく継続的な経験を重ねることで、地域ぐるみで子育てを支える場として再構想する可能性を検討しました。
2045年のありたい未来ビジョン
「未来世代を育てる公共ネイチャープラットフォーム」
熊本市動植物園は、単なるレジャー施設ではなく、自然と生物を一体で学び、親子が生命の大切さや自然との関わりを身体感覚で理解できる公共的な学びの場へと進化しています。バーチャル体験が当たり前になった社会だからこそ、実物の動植物にふれ、水源の大切さや命の尊さ、自然の非効率さや想定外に出会う価値を実感できる場としての意味が高まっています。また、子どもが来園者として楽しむだけでなく、飼育や栽培、調査など園の活動に主体的に関わることで、将来の担い手として育つ機会を得ることができます。
実現に向けたステップ
この未来を実現するために、まずは動植物園の価値を「レジャー施設」から「自然体験・学び・子育て支援の社会資源」へと捉え直し、親子が訪れやすく、学びが継続しやすい体験設計を進めます。その上で、行政、学校、企業、地域団体が連携しながら、学びの効果や社会的価値を可視化し、参加・支援・資金循環の仕組みを広げていく段階的なアプローチが整理されました。
フェーズ1:価値の再定義と可視化の土台づくり(2026〜2030年)
初期段階では、動植物園を自然体験・学び・子育て支援の機能を持つ社会資源として捉え直し、その価値を言語化・可視化する土台づくりを進めます。同時に、タブレットや知識だけで理解したつもりになる学びではなく、実物の動植物にふれ、生命や自然を身体感覚で理解できる体験を構想します。園の取り組みが子育て支援や教育にどのような効果を持つのかを可視化し、今後の実装に向けた土台をつくります。
フェーズ2:官民連携による実装と評価の拡張(2030〜2035年)
次の段階では、プログラムの標準化や評価指標、寄付・参画の仕組みを整えることで、行政の実装判断と企業・個人の投資・支援判断を接続していきます。環境・教育・子育てを横断する取り組みとして園の役割を位置づけ直し、単発のイベントではなく、継続的に実践できる学びの仕組みへと移行する条件を整えます。
フェーズ3:地域で未来世代を育てる公共基盤として定着(2035〜2045年)
中長期的には、熊本市動植物園と江津湖エリアが、自然と生命を学びながら地域ぐるみで子育てを支える公共ネイチャープラットフォームとして定着します。リンクワーカーやボランティアなど多様な担い手が園と生活者をつなぎ、動植物園が「行けば子育てが学べて助かる」場所として生活に組み込まれることで、地域全体で未来世代を育てる力を再構築していきます。
メンバー
今村 安孝(肥後ちゃぼ保存会)
岩越 泉(公益財団法人再春館「一本の木」財団)
鎌田 公二(熊本トヨタ自動車株式会社)
杉本 崇(熊本県シェアリングネイチャー協会)
濱田 修二(熊本県立東稜高等学校)
松本 朱実(桜美林大学/一般社団法人ミュージアムESDコミュニティ)
渡邉 重義(熊本大学教育学部)
岩崎 千夏(熊本市動植物園マスタープラン推進会議/熊本市現代美術館)
飯冨 順子(熊本市動植物園)
上坪 教夫(ファシリテーター/東京科学大学 環境・社会理工学院 大橋研究室)